知覚過敏は、虫歯や歯の神経に炎症がないにもかかわらず、歯ブラシの毛先が触れる、冷たいものや甘いものを口にする、風が当たるなどの刺激によって歯に痛みが生じる症状を指します。

歯の構造と知覚過敏のメカニズム

歯の構造は、外側からエナメル質、象牙質、神経(歯髄(しずい))となっており、象牙質がこすれたり、冷たいものや熱いものが触れたりすると、刺激が神経へと伝わり痛みを生じることがあります。
 
ただし、通常は象牙質の外側をエナメル質が覆っているため、こういった刺激で痛みを感じることは少ないとされています。
 
しかし、何らかの原因で象牙質が露出し刺激を受けると痛みを感じることがあります。

知覚過敏の原因

知覚過敏の根本的な原因は象牙質の露出であり、象牙質の露出は歯肉の縮み、歯の欠損、歯のすり減り、歯が溶ける、虫歯治療やホワイトニングなどによって起こると考えられています。
 

歯肉の退縮

加齢や歯周病が原因で歯肉(歯茎)の位置が下がり、それに伴って歯の根元がむき出しになることで象牙質も露出することがあります。このような知覚過敏では、歯ブラシや温度変化による刺激で痛みを感じることがありますが、一般的に持続時間は1分以内程度で、長時間続くことはないとされています。

歯のすり減り

歯は日々少しずつすり減っていますが、エナメル質が大きくすり減ると象牙質が露出して知覚過敏の症状が現れることがあります。
 
歯がすり減る原因として歯ぎしりや食いしばりなども関係するため、癖になっている場合は注意しましょう。
また、睡眠時に知らず知らずのうちに歯ぎしりや食いしばりをしていることもあります。
 
これらは睡眠が浅い時期によく発生するとされており、疲れやストレスがたまっているとき、過剰な飲酒をしたときは特に眠りが浅くなって、歯ぎしりや食いしばりも助長されるといわれているため、注意が必要です。
 
しかし、睡眠時の歯ぎしりや食いしばりを完全になくすことは難しいので、歯のすり減りを防止するために就寝時に装着するマウスピースを製作することもあります。

酸蝕歯(さんしょくし)

エナメル質はpH5.5程度(弱酸性)で溶け始めます。そのため、炭酸飲料を長時間かけて飲んだり、酸っぱいものを頻繁かつ長時間にわたって口にしたりすると、エナメル質が溶けて象牙質が露出することがあります。こうして溶けた歯のことを酸蝕歯といいます。
また、象牙質はエナメル質よりも弱い酸で溶けるため、食習慣を改善しないとさらに歯が溶ける悪循環に陥ることもあります。元々、歯ぎしりや食いしばりの癖がある方がこのような食習慣を続けると、歯のすり減りが増すこともあります。

虫歯治療やホワイトニング

虫歯治療のために歯を削るなどの処置をすることが知覚過敏につながることもあります。時間が経てば解消される場合もありますが、いつまでも治らない場合は再治療が必要になることもあります。
また、ホワイトニングで使う薬剤が原因となることもあります。しかし、ホワイトニングに伴う知覚過敏は一時的なものであり、ホワイトニングを中断すると知覚過敏もなくなることが一般的です。
 

治療

知覚過敏は象牙質からの刺激の伝達を抑えることで症状を改善することができます。症状が軽い場合は、唾液や歯みがき剤による歯の再石灰化によって症状が自然に軽快することもあります。そのほかの治療法には以下のものがあります。

硝酸カリウムを含む歯みがき剤の使用

硝酸(しょうさん)カリウムと呼ばれる成分を含む歯みがき剤を使用することで、歯の神経の興奮が抑えられ、知覚過敏が改善することがあります。
 

象牙質の露出を封鎖する処置

歯科医院で専用の材料を象牙質の露出部分に塗布する治療です。素材の成分によって、神経の伝達を遮断したり、象牙質の露出を被覆したりすることができます。

歯の神経の処置

歯髄(しずい)と呼ばれる歯の神経を取り除く治療です。知覚過敏の症状が長い場合や痛みが激しい場合など、歯髄の炎症が疑われるときに行われることがあります。
 

予防

知覚過敏は歯肉の退縮や歯の表面が酸によって溶けることなどによって起こります。ある程度は加齢に伴ってみられるものではありますが、歯周病予防や歯の保護、酸性の飲食物を避けることなどによって象牙質の露出を防ぐことができます。
知覚過敏と似たような症状は、虫歯などの歯の病変でもみられることがあります。症状がある場合は早めに歯科医院を受診し、病変の早期発見・早期治療に努めることが大切です。


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